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秋の夜。
灯ともす書房にひとりの少年が訪れます。背中には少し大きすぎるリュック。そして抱えてきたのは──古びた地理の教科書。
ページの余白に書き込まれていたのは、祖父が描いた小さな落書きの“地図”でした。
「ここが秘密の冒険場所」
川、公園、森……祖父と過ごした思い出の断片は、すべてその地図に刻まれていたのです。
陽太の心には、祖父と過ごしたかけがえのない時間が蘇ります。
石を投げて遊んだ川辺、夜空を数えきれないほどの星と一緒に眺めた夜、桜舞う道を歩きながら聞いた言葉──。
しかし、突然の別れによってその時間は途切れてしまいました。
残されたのは、余白に描かれた落書き。
けれどそれは“終わり”ではなく、“続き”を示すための灯火だったのです。
少年は気づきます。
──「僕が続きを歩けばいいんだ。おじいちゃんが描いた地図を、僕が進んでいけばいい」
祖父は姿を変えて、なお共に歩んでいる。
それは、深い悲しみを超えて見つけた“つながり”の形でした。
『余白の地図』は、
失った存在との別れが「終わり」ではなく、未来へ託された「冒険の続き」であることをそっと教えてくれる物語です。
人生にはまだ、書き込まれていない余白がたくさんあります。
そこにどんな地図を描くのか──それは私たち自身の選択であり、歩みです。
そしてその歩みは、きっと大切な人との“絆”を、時を超えて照らしてくれるのかもしれません。
どうぞ今宵、灯ともす書房の物語に耳を澄ませてください。
あなたの心の余白にも、新しい地図が静かに広がっていきますように。
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